JR四国の「伊予灘ものがたり」に乗車してみました。乗車券+特急券+グリーン券が必要となり、食事をする場合は食事券も必要となります。定価で買うと食事込で1万円ほどになりますが、JR四国のwebツアーからパックで買うと半額相当で買えます。JR他社の窓口でも特急券とグリーン券は買えますが、食事券は買えずJR四国に申込する必要があります。2014年から運行を開始、2022年から特急化されましたが、令和の食堂車と言っても過言では無いぐらいの豪華な設備と沿線住民の温かな歓迎に支えられ、乗車率は9割超で大人気、赤字路線が黒字になるぐらいであり観光列車ランキングでも1位を取るぐらい急成長を遂げています。
入線するだけで客のほぼ全員がカメラを構え、駅の社員全員が仕事を中断して集まるぐらいの徹底ぶりです。乗らない人まで入線を見つめる光景は結構驚きです。専用の絨毯が敷かれ専用の入線メロディが流れます。
入線が完了し扉が開くと、乗車出来ます。あれだけ特急車内で各駅ごとに徹底的に集札する四国なのに、ものがたり列車は食事券しか見ません。全席指定(グリーン)なので勝手に座ってもバレるからでしょう。
客室はこのようにかなり豪華になっています。1・2・4人席があるようです。3号車は個室で更に豪華ですが、個室料が追加となります。サンライズを彷彿とさせる木のぬくもりを中心としたデザインになっていますね。椅子もお洒落でかなりフカフカです。気動車ですが揺れづらい構造となっています。客層はシニア層が多いのかと思いきや、意外と若い男女が多かったのは衝撃でしたね。
座ってまず用紙の記入を求められますが、これはアナウンスが無いので隣の客の雰囲気を見ながら書き込みます。書き込みを終えるとアテンダントが回収しに来るので必須なのでしょう。メニューやおしぼりやお箸が置いてある時点で、もはや令和の食堂車ですね。予約申込の早い順に1番2番と席が割り当てられるようです。普通列車時代は椅子取りゲームになっていたと考えると恐ろしい話ですね。
定刻になると発車し、10分ぐらい経つと食事が出てきます。食事は3~6日前に事前に予約していた人のみ対象で、1番の人から先に提供されます。こちらは11月のメニューですが、月によって料理の内容は変わります。車内での軽食注文も出来ますがこの食事は出てきません。蓋を開けると色鮮やかな料理がお目見えします。東日本のグランクラスよりも格は高いですね。こちらは8年やってるので運営のノウハウはかなりあるでしょう。ちなみにこの食事、普通に買うと3000円ぐらいします。弁当のようなものを提供する観光列車は多数ありますが、普通に食器で提供するのは全国的に見ても極めて珍しく、その食器も沿線地域のプロが作った一流の食器を使っています。
温製料理という事でシチューやコーヒーも提供されます。食べるタイミングに指示はありませんが、提供されたらすぐに食べましょう。意外と保温性があるようでかなり温かいです。温かいものが出るのは他の観光列車との大きな違いです。
みかんを食べていると沿線住民が温かく手を振って出迎えてくれます。関東ではこういうのはなかなか無いので、四国だからこそなせる技でしょう。工事現場の人から車道を走るドライバーまで手を振ってくれるのは驚きですね。赤字路線でも運用やアイデア次第で素敵な路線に生まれ変わる全国的に見ても極めて珍しい成功例であり、運行開始から9割超という異例の乗車率を維持できているのはアテンダントと沿線住民のおかげでしょう。
海の見える場所で10分程度停車し、ホーム上で自由に写真等を撮れます。車外メロディ装置が付いていて、メロディが鳴ったら戻るという事になっています。沿線住民と写真を撮ったり会話を楽しむ事も出来ます。途中でホームに降ろしてくれる観光列車は過去に見た事がありません。この区間は単線なのでここを走る全ての普通・特急列車はどこかで待ち合わせをしている事になります。
モニターも付いており運転席の風景をそのまま映し出しています。絶景スポットや観光スポットは適宜アナウンスが入りますので、その度にカメラを向けると良いでしょう。全員食事する上、全員写真を撮るという事で全員同じ目的であればお互い快適ですね。
車内で頼める食事という事で、みかんジュース(500円)と坊っちゃん団子(400円)を頼んでみました。他にもメニューは多数あります。食事の追加注文の声かけはありませんので、アテンダントを呼び止めて頼む必要があります。ストックがあるのか分かりませんが、意外とすぐに出てきます。かなり美味しいですね。全ての代金は後払いで、終着駅手前で現金またはペイペイで払えます。愛媛県完結列車なので愛媛の地域クーポンでも払えます。アテンダントは車内に5~6人ほどいて、注文受付・配膳・観光スポット案内・食べ終わった食事の片付け等をしてくれます。事前予約制の食事を頼んでいない人や当日に乗車券類を買った人でも車内販売の注文は可能なので、乗るだけで終わったという事は無いでしょう。
その後も観光名所等を通過していきます。時速5km/h程度まで速度を落として写真を撮りやすくしてくれる場所もあります。特急列車なのに並走する自動車より速度が遅いという事もよくありますが、特急の足回りを使ったので特急扱いのようです。
沿線住民のお出迎えが素晴らしいですね。ものがたり列車の為に家に装飾をしている所もあるぐらいです。JR四国は赤字と言われていますが、廃線にした路線は一つもありません。鉄道とは客数だけでは無いんだぞ、数字だけで物事を語るな、一人でも乗る人がいるなら駅は残すべき、沿線住民と共に存在し発展を遂げるという事を暗に伝えているような気がする訳で、机上の空論で客数が少ないから廃線にしろとか言っているネット民や国交省の人はぜひものがたり列車に乗ってみてもらいたいですね。
最後は殆どお出迎え(お手振り)の写真になりましたが、土日祝の運行なのに発車時刻に合わせて出迎えてくれるのは本当に素晴らしい事だと思います。普通の人ならば列車に乗って歓迎される事は無いはずなので感動する人が多いはずです。国交省は四国に対して収支を改善しろと言っているようですが、ものがたり列車に乗ればおそらく考えが変わるはずで四国がかなり努力している部分は分かるかと思います。アテンダントの接客も素晴らしく、飛行機のCAレベルははるかに超越していて関東で言えばネクスコ中日本のような柔軟でソフトな接客ですね。単純に豪華な列車や食事が出る列車と言えばサンライズやサフィールがある訳で、まるでホテルのように豪華で温かい料理を出す事・料理が数ヶ月おきに変わる事・アテンダントの接客・沿線住民のお手振り含めた交流が人気の理由だと思います。接続も工夫されていて、20分待ち折り返しでまた乗る(その分の料金券は別途必要)、普通の特急で戻るか選べるのも良いですね。伊予灘の他にも2種類ものがたり列車があるので、興味のある人はぜひ乗ってみて下さい。
