今回のドコモ通信障害の会見を見ていたが、総務省が電気通信事業法において定める重大事故の要件にあたる「影響人数」「影響時間」について、前週と比較した理論値は200万と言いつつも正確な数字は特定不能として明言を避けているような印象を受けた。午後5時に障害が発生して午後8時前に回復したような一報を出していたが、実際に完全に回復したのは公式発表によれば翌日午前5時頃であり、7時前後までかかったユーザーも多いはずである。3Gも含めて完全復旧を発表したのは障害が起きてから29時間後の15日午後10時である。
総務省が定める重大事故の規定によれば、緊急通報が影響を受けたのであれば、障害時間1時間・回線数3万以上で重大事故と認定される。また電気通信役務の対価を受けるサービス(通信料を取るサービス)であれば、回線数3万以上で2時間、回線数100万以上で1時間落とした場合には重大事故と認定される。d払いやシェアサイクル等のサービスは電気通信役務の対価を受けないサービスであるから、回線数100万以上で12時間以上落とした場合はこちらも重大事故と認定される。重大事故の法律上の条文は以下のようになっている。
(報告を要する重大な事故)
第五十八条 法第二十八条の総務省令で定める重大な事故は、次のとおりとする。
一 次の表の上欄に掲げる電気通信役務の区分に応じ、それぞれ同表の中欄に掲げる時間以上電気通信設備の故障により電気通信役務の全部又は一部(付加的な機能の提供に係るものを除く。)の提供を停止又は品質を低下させた事故であつて、当該電気通信役務の提供の停止又は品質の低下を受けた利用者の数がそれぞれ同表の下欄に掲げる数以上のもの
緊急通報を取り扱う音声伝送:1時間/3万
利用者から通信料を取らないサービス:12時間/100万 24時間/10万
それ以外の電気通信役務:2時間/3万 1時間/100万
つまり全部または一部が停止または品質を低下させた場合で、時間と回線数が要件に当てはまれば重大事故に当たるという事になる。重大事故となればそれが大きく報道されてブランドイメージがマイナスになるのでドコモとしては認定を避けたい所であるが、それは総務省がどう判断するかという所になるだろう。過去のニュースを調べてみたが、ドコモでは2012年以来重大事故を起こしておらずその高い品質がこれまで評価されキャリアとしてもそれを宣伝してきた訳で、5Gを売り込むに当たりこの時期の認定が痛い気持ちは分かる所である。殆どのテレビ局ではドコモがスポンサーの為深入り報道はせず障害の事実だけを淡々と報道して終わっているテレビ局が殆どなのも残念であるが、いくら開発者や運用保守の人が夜中頑張っているという部分は感謝するにしても障害を起こした事実が消える事はない訳で、今後の再発防止の為にも電気通信事業法を管轄する総務省がどういう対応をしてどういう発表をするか注目したい所である。
