物議醸した許可ボタン連打装置…スタンド競争激化で消防法改正

ガソリンスタンドは、過度な価格競争状態に陥っている。消費者は1円単位でシビアになっており、1円でも安いスタンドで給油しようとする。なぜならどこで汲んでも同じだから。
毎日向かいのスタンドなど競合店同士で看板価格を確認し合い、価格を揃えているという事も多い。ガソリン販売では利益が出ないので、最近は洗車やコーティング、板金、リース、保険販売など単価の高いサービスで利益を得る業界になりつつある。
これらと最低賃金上昇も相まって、ガソリンスタンド店舗数は減少傾向にあり、資源エネルギー庁の調査によれば平成26年度末で全国33,510店あった給油所数は30年度末には30,070店となっており、少ないパイを取り合う状態が続いており体力の奪い合い合戦となっているのが現状だ。

上の図はスタンド店舗数(フル・セルフ合計)と最低賃金全国加重平均をグラフ化したものである。
これらの競争阻害の大きな要因となっているのは法律及び人的コストであり、消防法で「セルフで客が給油する時には事務所の制御卓で安全を確認し、給油許可ボタンを押さなければいけない」と規定されているため人件費削減に限界があり廃業を選ぶスタンドが多い事だ。
2017年5月に茨城県筑西市で衝撃的な事件が起きた。当時もネットで話題になったが、モニターの右下にある給油許可ボタンを連打する機械を自作して消防法に違反し機械の取り外し等の厳重注意を受けた例だ。「その才能他に生かせるだろ」などと言われていたが、大幅な人件費削減に繋がったのは言うまでもない。最初はハンマーのような機械だったが、うるさいという事でボックス式の機械に小型化されたのは記憶に新しい。
これらの報道もあってか、総務省が令和2年4月1日から、消防法の一部を改正した。

消防法 第二十八条の二の五 顧客に自ら給油等をさせる屋外給油取扱所の特例
七 顧客の給油作業等を制御するための可搬式の制御機器を設ける場合にあっては、次に定めるところによること。
イ 可搬式の制御機器には、前号ハに規定する制御装置を設けること。
ロ 可搬式の制御機器には、前号ニに規定する制御装置を設けること。

エネオスに可搬式制御機器を導入するか聞いたところ、以下のように回答した。

セルフSSでの持ち運び型端末等による給油許可に関する当社対応は現在検討中です。

要は従来は事務所の中でしか認められていなかった給油許可を、従来の制御装置と同じ機能を備える事を条件に事務所の外でも可能にしますという事だ。例えば業務用のタブレットやスマホ等を置いておき、客が給油しようとするとそれらの端末に現在の画面と選択肢が表示され、OKを押せば給油されるという仕組みだ。これであればスタンド店員が他の作業をしていても事務所に行く必要が無く許可作業が行える。深夜はワンオペが多く、トイレ中に客が来たら待たせる事になるが、この持ち運び端末があればトイレから状況を確認して許可を飛ばせる為サービス向上にも繋がる。さらにAIで自動許可という案も浮上している。ナンバーを必ず撮影する、クレジット払いに限定、年3回以上利用の常連に限定などという縛りを付けて3年前の事件のように連打装置の容認、あるいは給油許可規定の廃止も斬新かもしれない。現在は「給油するスタンドと許可するスタンドは同一敷地内でなければならない」となっているが、技術の向上により映像を瞬時にやりとりできるようになりある意味消防法が時代に合っていないという考え方もできる。条件付き自動許可、AI自動許可、本社の人間が許可作業をできるようにする、他のスタンドの許可作業もできるようにする(客数の多いスタンドの許可作業を手伝う)など臨機応変に法律改正していかないと今後さらに価格競争に耐えられないスタンドの廃業が増えてガソリンを給油できなくなる未来もそう遠くは無いのかもしれない。