店舗経営者が守るべき労基法12のポイント

使用者と労働者は本来平等な関係であるべきですが、どうしても立場上使用者の地位が優位になることがあります。
この地位を利用して、悪質な労働環境を防ぐために、労働者を守る「労働基準法」があり、使用者はこれを厳守しなければならず、この規定を下回る規則は一切無効で、なおかつ違反した場合は罰則もある大変厳しい(けど当たり前)のものです。

特にコンビニオーナーなど、個人店主の感覚でやっている店舗経営者は、労働法の知識がなく、自分の知らない間にブラック職場を作り上げている節が否めません。
ここに改めて労働法の規則を書いておきますので、使用者のみならず労働者も読み、「あれ?おかしいぞ」と思ったら労基署などに相談するようにして下さい。

 

1.この法律違反の契約

第十三条  この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

解説:店舗経営者が独自で「レジの違算は全額負担」「○○円を超えたら負担させる」「恵方巻きを買わないと時給を下げる・シフトを減らす」「12時間×週5ができないなら即日解雇」など規則を定めても、労基法ではこれを禁止しているため、無効となります。また最低賃金も規定があり、それを下回る時給は無効となります。

 

2.賠償予定の禁止

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

解説:たとえば、ものを壊した場合に「壊した物品の1割を給与から差し引きます」「商品を落とした・破損させた場合は買い取って頂きます」「レジの違算は負担して頂きます」など、損害賠償額を予定する契約をしてはなりません。
そもそも買い取ってもらうような商品ならバイトに扱わせるなって話だし、バイトに扱わせる以上はそういうリスクは織り込み済みのはずです。
これらは全て違法で、労働者が訴えた場合、店長や店舗経営者に指導が入ります。

 

3.解雇の予告

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

解説:要するに、従業員を使用者が辞めさせる場合には30日前の予告が必要です。よっぽど会社に損害を与えたり罪を犯したりでなければ、マンガ等でよくある使用者側の「今日でクビな。もうこなくていい」はできません。仮に言われたとしても労働者は労基法を盾に守ることができます。ただ「平均賃金の30日分以上を支払うから今日でクビな」といわれたら、従うしかないでしょう。
逆に、労働者に関する規定はありませんので、理由の如何に関わらず即日退職することもできます。それが労働者の権利です。
また、事情などがあって30日前の予告ができない場合は代わりに金銭を支払え、と書いています。その人が30日働いていた場合に本来得られた賃金のことです。例えば20日前に予告した場合は、10日分に相当する賃金を支払う必要があります。
例えば閉店の場合は全員解雇になりますが、何らかの事情で30日前に予告できなかった場合は先述の通り追加賃金の支払いが必要です。

 

4.賃金の支払

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
○2  賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

解説:賃金は、通貨、つまり現金で支払えと記載されています。現金であれば、現生でも振込でも構いません。何らかの物品、クレジットの枠や商品券、電子マネーなどでの交付は不可です。そして月に1回以上払えと記載されています。これは労働者の生活に関わるためです。

 

5.休業手当

第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

解説:社会保険等に加入していないアルバイト、パートタイマー等が対象となりますが、正規の仕事をしていて何らかの事件・事故に遭った場合に、使用者の責任が完全に否定されるものではないことから、労働者が休暇を請求した場合には、その6割を休業手当として支給する必要があります。
また、店舗改装や経営難などで一時的に休業する場合も使用者のせいでそうしたわけですから、休業期間中は6割の給与を支払う必要があります。これも労働者の生活に関わるためです。
何をもって6割かという話ですが、平均賃金の6割で、端的に言えば過去3ヶ月の支給額の平均です。例えばAさんは10万、9万、7万だったとしたら、休業期間中は毎月8.6万を休業が終わるまで支給する必要があります。もし休業期間が13日だった場合は8.6/30*13=3.72万を支払うのが妥当でしょう。
なんで働いてないのに金を出さなきゃならんのだ、と思うかもしれませんが、赤の他人を雇うということはそういうことです。それが法律です。嫌なら自分で24時間やればと言う話です。

 

6.労働時間

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

解説:ここには労働時間に関する規則が記されています。一週間で40時間を超える労働はできません。さらに、休憩時間を除いた実労働時間が、一日8時間を超えてはいけないと明記されています。つまり一日8時間労働×週5日が、この法律のベースとなっています。
ただしこれは一般的な解釈で、特定の日が極端に忙しくなる場合などは、届け出をすることでこの規則を破っても良いものとされています。

第三十二条の四の二  使用者が、対象期間中の前条の規定により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第三十七条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。

解説:要は、基本的には週に40時間を超える労働は禁止しているが、人手不足等でどうしても労働させた場合は、割増賃金を支払えと記載されています。この割増賃金は、現在25%と定義されています。

 

7.休憩

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
○3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

解説:休憩時間についても、規定があります。
例 9~16時 7時間拘束 45分休憩
9~17時 8時間拘束 45分休憩
9~17時半 8時間半拘束 1時間休憩
9~18時 9時間拘束 1時間休憩
労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、つまり6時間ジャストやそれ以下の場合は休憩は必要ありません。また8時間を超える場合は1時間の休憩が必要です。この休憩は、分割して与えても良いとされています。さらに、割増賃金さえ支給していれば、10時間労働しようが11時間労働しようが、休憩時間は1時間でよいということになります。休憩に賃金は発生しないのが一般的ですが、発生させている職場もあります。
また、休憩時間に事務所に待機させブザーで呼ばれたら仕事をしなければならない、電話が来たらとらなければならない状態は、休憩とは言えません。違法です。飲食、外出が可能など、完全に自由に利用できるものでなければなりません。
休憩取ったら賃金が減るという労働者には、時給アップや手当等で対応しましょう。

 

8.休日

第三十五条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
○2  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

解説:休憩に続き、休日も規定があります。要は、週に1回休めということです。週7勤務はできません。週6までです。しかし、人がいないなど何らかの都合で「4週間に4日」という逃げ道も用意されています。この解釈をすると、最大でも26連勤(一ヶ月30日の場合)まで可能となりますが、やはり週で慣らすと週1回は休まなければいけないことに変わりはありません。どれだけ稼ぎたいといっても、必ず月に4日は休みが必要です。新聞配達は、月に1度しか休みがありませんが、一回の勤務時間が2~3時間など短時間であること、全国にあまねく公共性の高い媒体を毎日届けるという観点から、特例を利用しているものと思われます。
※経営者が同じ場合は労働場所が違っても適用されます。たとえばA社長のもとでA店とB店を行き来していた場合、週1の休みがないとアウトです。
ただし経営者が違う場合は掛け持ちとなり、労働者の自己責任です。A社長とB社長がそれぞれ週1だったとしても、総合的に見れば休みがないことになりますが、それは労働者が調整することです。

 

9.時間外、休日及び深夜の割増賃金

第三十七条  使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
○4  使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

解説:1日8時間、週40時間を超えて勤務した場合は「時間外手当」として残業代を支払う必要があります。ここで具体的に割合が25%以上50%以下と明示されています。また時間外労働時間が月に60時間を超えた場合は、50%以上の割増が必要です。さらに、午後10時から午前5時に勤務した場合は、25%の深夜割増が必要です。これは昼から勤務していた場合も、この時間帯が入っていた場合は、一律割増となります。これらの割増は、組み合わさる場合は合算となります。例えば深夜+時間外の場合は50%割増となります。割増を払いたくなければ、素直に人を雇えという国からの指示です。
夜勤者にだけ払えばいいものでは無く、前後の時間帯の勤務者が数分でも午後10時~午前5時に入っていたら支払う必要があります。
また、25%とは何に対してかという話ですが、時給の場合は個人によって設定が異なりますので、その人の昼の時給に対しての25%です。その組織の基本時給のことではありません。なぜなら、その時給を払う価値のある人が夜に働くことは、昼に働くことの25%割増という考え方になるからです。昼の時給をアップしても夜の時給もアップしていないと、うっかり労基法違反!となることもあるので注意してください。

 

10.年次有給休暇

第三十九条  使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
○2  使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。
六箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
一年  一労働日
二年  二労働日
三年  四労働日
四年  六労働日
五年  八労働日
六年以上  十労働日

解説:従業員を休ませることを目的に、従業員が自ら申し出た場合に、休みの日に賃金を支払う「年次有給休暇」が法律で定義されています。これは、半年以上の継続勤務・契約の8割以上の出勤を条件に付与されます。アルバイト・パート・学生にも適用されます。法律には書かれていませんが、当たり前のことなので書かれていないだけです。上で示しているのは純粋な日数ではなく、週5の場合は「10日」の付与が必要で、年が経つごとに上の日数を付け足せ、という内容です。誤解しないように注意願います。なお、週1~週4の場合は比例付与となります。原則として業務が忙しい場合に日程の移動を使用者が要望することはできますが、申請自体の拒否はできません。有給休暇は出勤したものと同じ扱いですので、有休を使った日数は「出勤した日数」に含みます。なお、交通費の支払いは必須ではありません。ケチな経営者がよく拒否をしたりする事例がありますが、「有給未払い」というれっきとした法律違反で、拒否はできません。金額にしても数万円と大きくなる傾向にある事から、労働者が訴えた場合、労基も動きやすい案件になります。

 

11.最低年齢

第五十六条  使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。
第五十九条  未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない。

解説:15歳に達したあとの3/31が終了するまで、つまり一般的には中学を卒業しても3/31までは仕事はできません。また、親など他人が勝手に未成年者の給与を受け取ってはならないとも書かれています。
また、別の項で、18歳未満は時間外手当の支払いは不要であると書かれています。ただし「時間外勤務をさせることができる」という規則も対象外となっていることから、概ね時間外勤務はできないと解釈した方が良いかと思います。

 

12.深夜業

第六十一条  使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。

解説:当たり前のことですが、18歳に満たない者を午後10時から午前5時の間に働かせてはなりません。18歳の誕生日を勤務中に迎える場合は、アウトです。18歳になってから勤務してください。
タイムカードが1分単位の場合、午後10時5分に退店した18歳は法律違反になるのかと言うことですが、厳密にはなります。まぁこれだけの違反で労基が動くことはほとんど無いですが。
ですので、万が一労基が入っても指摘されないように、高校生は午前6時~午後9時までの勤務とするのが安全です。

 

このように主要な条文を引っ張ってきましたが、これだけ見ても、実に労働者を守るための法律であるということが見て取れるかと思います。
そして使用者は「人を雇って仕事をさせる」ということは、きちんと余裕を持った資金繰りをして下さい、逆に言えば労働者にお金を払えない会社は人に仕事をさせないでください、そして重い責任と自覚を持ってください、と国が通達を出しているようなものです。
人件費削減の波の中、長時間労働や善意のサービス残業によって成り立っている日本かもしれませんが、労基法は一日8時間勤務×週5日こそが最善であると書いており、休憩時間に関しても、実によく考えられた時間であると思っています。休憩時間が引かれたくない、稼ぎたいという人もいるかもしれませんが、そういう人には時給を上げるなど労基法に違反しないように対策をすることが重要です。

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